blog
2022.06.06
手すりを考える
「北綾瀬の家」の手すりを考えています。
今まで多く手すりの設計をしてきました。
基本的には使い回しではなく、その都度一から設計をしています。
家族構成や年齢、階段形状やコスト、要望などの条件が変わり、
空間の雰囲気も違うので毎回少しづつ変えているのですが、
唯一変わらない点があるとしたら、
〝手すりの役割は人に寄り添い支える〟ということだと思います。
ただ、この役割(支え寄り添う)がどうあるべきか毎回悩んでいます。
素材や形状、取り付け方や位置、意匠や安全性など考えることは意外に多く、
目立つため全体の雰囲気を壊さないようにデザインしなくてはなりません。
住まいの中でスポットライトを浴びることの少ない脇役の手すりですが、
実は結構重要な存在なのです。
スケッチや図面を描きあれこれと検討しながら、
以前の現場で製作しもらったサンプルで形状や握りやすさを確認します。
先端は直角がいいのか丸面なのか、面取りされている方がいいのか等々。
前の設計を少しずつブラッシュアップしながら形状を模索しています。
写真で握っているのは厚み36mmの杉、丸面仕様。
こちらは杉、30×50 角R3仕様。
些細な違いでも見え方や強度、握った時の安心感に関わってきます。
この安心感、手すりの設計ではすごく重要なのです。
何故なら握った瞬間に伝わる安心感や強度がなかったら、
気兼ねなく身体を委ねることができるでしょうか?
華奢で折れて倒れそうとか、握ると痛そうとか、触ると冷たそうとか。
危険を感じる手すりは多分使われることはないでしょう。
満足に機能しない機能が必要な部材に意味はないでしょうし、
建築基準法を満たしただけで、付けておけばいいという物ではないのです。
デザイン優先で身体が拒絶反応を起こすような、
設計者の自己満足だけが漂う代物ではダメなのです。
『人と手すりの信頼関係をつくる』
これが手すり設計の肝だと思っています。
以前のブログ「不易流行」で内藤廣さんが設計した、
虎屋の手すりを観察しましたが、
思い出し反芻しながら取り組んでいます。
羊羹アールは使いませんが(笑)
手すりに限った話ではありません。
人と家、人と空間、人と構造、人とデザイン、人と家具、人と素材、人と自然、人と人など。
この信頼関係の多さが住まいの居心地や質を決めるような気がしています。
なので、「たかが手すり一つに」と思うかもしれませんが、
住まいの中で様々な信頼関係が増すように、
熟考を重ね一つ一つ丁寧に設計するように日々心がけています。
今回は年配の方の使用も想定しているので、
木で握りやすい安心感のあるデザインを求め、
引き続き検討していきたいと思います。
iso