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2023.11.13
鈍考/喫茶 芳
BACH代表・幅允孝さんの私設図書館「鈍考/喫茶 芳」。
京都の洛北を走る叡山鉄道の無人駅「三宅八幡」で降りて歩くこと10分。
小川や田畑の長閑な風景を経て目的地にたどり着く。
帰路、この道程がすでに鈍考への入口、導入になっていることに気がつく。
「鈍考/喫茶 芳」は珈琲を飲みながら、静かに本のページを捲り、
多様な空間のなかにそれぞれが居場所を見つけ、
読書という孤独な時間に潜り、過去の誰かと交感する場所。
内部へ入ると、周辺の豊かな自然と3000冊の書籍が視界に飛び込んでくる。
店主に誘われ、カウンターの前へ。
簡単な説明を聞き珈琲を注文をして、暫し心を落ち着かせる。
まだ、10分しか経っていないのに優しく包まれるような空間に身体が弛緩していく。
考え抜かれた設計と細やかなディテール、
丁寧な職人の仕事と自然素材が織りなす奏。
品の良い佇まいと納まりが全体に通底していて、とにかく心地よい。
建築はこちらに多くを語りかけてこない。
饒舌ではなく寡黙。
営みの背景に徹する節度に、知的で寛容な姿をみる。
珈琲の香りと、風でそよぐ檜林と刻々と移ろう光を感じながらの鈍い時間。
曰く、「時間の流れの遅い場所をつくること」が鈍考の始まり。
見事に具現化された空間には鈍く、遅い時間が確かに存在している。
それは、店主のホスピタリティーや来訪者の意識と所作、
そして、静けさを担保する建築の三者による親密で良好な関係によってつくりだされている。
静寂と鈍く遅い時間。
「鈍考/喫茶 芳」
時間を求めて行く、時間を忘れる場所。
iso
鈍考/喫茶 芳 → https://donkou.jp/