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2022.05.20

用途のない場所

こんにちは、礒です。

 

先日、神奈川工科大学にあるKAIT広場、KAIT工房を見学してきました。

 

設計はアート・ビオトープ那須の水庭やサーペンタイン・パビリオン2019などでお馴染みの石上純也。

 

予約制ですが、毎月の予約受付開始直後に見学枠が埋まってしまうほどの人気です。

 

それもそのはず、なんとも不思議な空間に目が奪われます。

 

建築?パピリオン?アート?ランドスケープ?

 

どれも正解でどれも間違いのような…

 

なかなか一言では言い表わせない空間です。

しかしなんと形容すればよいのか。

 

とにかく今までにない空間体験。

 

地面の隆起と鉄板のたわみが不思議な浮遊感と程よい緊張感を醸し出しています。

 

内部は柱のない4100平米の大空間で天井の開口も通通で風や雨を通します。

 

そしてなんといっても12mm鉄板に穿たれた無数の穴。

 

矩形の光が地面に落ち幻想的な雰囲気に満ちていました。

 

天井の鉄板総重量はおよそ580t!

 

解説には天井の鉄板は外周の壁(鋼材)と基礎部分(基礎杭83本、アースアンカー54本)

 

で受け止めているとのこと。

 

そう言われると構造に思いが向かいますが、「考えるな、感じろ!」案件のような気がするので、

 

頭ではなく気持ち感性で空間体験することに集中しました。

 

 

職員の方曰く、

 

学生が好きな場所に寝転んだり、思いのままに時間を過ごす場所、

 

空間がもたらす他にはない感覚から新たな発想が刺激されるような場所、

 

学生がさまざまな活動を生み出していくことができる場所を目指したそうです。

 

なので、ここに用途はありません、と一言。

見学当日も学生さんが本を読んだり音楽を聞いたりヨガをしたりと、

 

思い思いの時を過ごして楽しむ姿が印象的でした。

 

羨ましい…

 

床に傾斜があることで自然に座ったり横になったりと、人の行為をさりげなく誘発します。

 

椅子もベンチもありませんが、この座りたくなる衝動は不思議な感覚です。

 

昔、イタリアのシエナのカンポ広場に行った時に、

 

人々が座って語らう姿が素敵だった記憶が蘇ります。

シエナのカンポ広場。

 

向い正面のマンジャの塔及びパラッツォ・プッブリコ(市庁舎美術館)

 

を囲むように緩やかな傾斜のある広場です。

 

世界で最も美しい広場と言われているそうですが、確かに美しかった。

 

石畳の地面と人の関係がここまで曖昧に溶け合う自然な姿に当時衝撃を受けました。

 

たぶん地面がフラットだったらこうはならなかったはず。

 

KAIT広場とは全く違いますが人の行為を誘発すると言う意味では共通点があるように思います。

 

お隣にあるKAIT工房も見学。

 

こちらもKAIT広場同様に石上純也設計でコンセプトは「森の中のものづくり」。

 

KAIT広場とは違い工房は柱だらけの空間で機能も用途もあり。

 

305本の柱がランダムに林立させることで空間を柔らかく仕切っています。

 

一つとして同じサイズの柱はないそうです。

 

柱の多さも特に気にならず、

 

むしろ柱を拠り所にして居場所をつくりだす楽しさや面白さがあるように感じました。

 

間仕切りのない大空間はとても開放的で学生の活気に満ちていました。

 

12年前の建築ですが、KAIT広場と違いも興味深いです。

 

どちらも期待していた以上でなんとも言えない不思議な空間体験でしたが、

 

見学できてよかった!

 

 

 

せっかくなので、学食にお邪魔して昼食をいただきました。

 

プチキャパスライフを満喫して終了です。

 

iso

 

 

 

 

 

 

 

 

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