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2021.06.16
アイノとアルヴァ 二人のアアルト展へ
こんにちは、礒です。
世田谷美術館で開催している「アイノとアルヴァ二人のアアルト 展」へ行きました。
会期が6月20日までだったので何とか滑り込みました。
アアルト 夫婦の建築、デザインに対する眼差しが伝わってくる展覧会でした。
そして、アルヴァのデザインに多大な影響を与えたアイノの存在の大きさを改めて感じました。
社会貢献への思い入れが強かったアイノは幼稚園や保育園など、
子供のためのインテリアや家具積極的にデザインしています。
アイノがデザインした子供用の折り畳みベット。
寝ている子供の写真が子供がなんとも可愛らしい。
ニューヨーク万国博覧会のフィンランド館のうねる壁を模した展示。
↓こちらはフィンランド館の模型。
アアルトの建築、デザインは曲線が多いのが特徴だと思います。
アルコール依存症で直線が描けなかったからだと言う冗談のような話もありますが、
この曲線は空間になると心地よく、優しく包まれている感じを受けます。
やはり建築は空間で考えないとダメですね。
こちらはiittalaアアルトフラワーベースの木型。
丸太をくり抜いた中に溶融ガラスを吹き付けて成型していたそうです。
流れるような有機的なフォルムのモチーフはフィンランドの湖の形、
白樺の根本付近の断面形状など諸説存在するそうです。
フラワーベースは、iittalaの工房で今も手吹きで制作されており、
熟練の職人7人が力を合わせてひとつのベースを完成させているとのこと。
渡り窓下に勢揃いしたアアルト デザインのチェア。
もちろん座り比べて座り心地を確認。
そして、世田谷美術館といえば建築家、内井昭蔵の代表作。
竣工は1986年。ほぼ同い年…
ボールト屋根と有機的なフォルムが特徴の建築で、
「生活空間としての美術館」をコンセプトに設計されました。
低層で抑えられた建築は木々に埋もれるように砧公園に静かに佇んでいます。
内井はこの作品で毎日芸術賞・日本芸術院賞を受賞しています。
内井は晩年、健康な建築を標榜しました。
著書「健康な建築」の冒頭にはこう記されています。
「健康とは〈生きているもの〉の価値基準である。
人は病んだとき初めて健康の喜びや健康の価値を知るのであるが、
このごろの建築をみていると、つくづく健康な建築の必要性を感じる。
最近の建築はどこか病んでいるようだ。
人間と建築とを同一に考えることはできないが、
健康という価値基準を建築にあてはめることはできると思う」。
世田谷美術館は1985年のバブル真っ只中に竣工しました。
その当時、健康な建築を説いていた内井の思想が、
周りからあまり受け入れられなかったのは想像に難しくありません。
しかし、当時の建築が既に取り壊され、時代と共に価値がなくなっていく姿を見ると、
世田谷美術館は内井の想いが現代に確かに繋がり、生きていることに気づかされます。
美術館の標石の裏にはこう記されています。
アアルト 夫婦、内井昭蔵を通じて改めて建築やデザインを考えさせれられる日になりました。
目線を遠くにおいて設計する大切さを感じます。
残念ながら展覧会の予約チケットは完売だそうですが、砧公園の散歩だけでも楽しめそうです。
世田谷美術館:https://www.setagayaartmuseum.or.jp/
iso