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2025.10.20
ゆるやかに時が流れる町・大磯
こんにちは、スタッフの田原です。
これまで同じ神奈川県内に住みながらあまりご縁のなかった大磯町ですが、
進行中の「大磯の家」に携わるようになってから、この町の魅力に惹かれるひとりとなっています。
初めて大磯の駅に降り立った時に、山の緑が近くにあり、どことなく海風も感じる、
この町独特の穏やかさと気品を肌で感じる印象を持ちました。
大磯は江戸時代には宿場町として栄え、明治20年に東海道線の大磯駅が開業したことで急速に発展し、
伊藤博文をはじめとする政界の要人たちや文豪・島崎藤村などが、別邸や邸宅を築いた土地であることを知りました。
この街に抱いた上品さは、そのような歴史から受けたものかもしれません。
(路地の交差点に「旧島崎藤村邸」。素朴でこじんまりとした平屋とお庭に、その人柄を感じたような気がします)
現在工事中の「大磯の家」の設計にあたっては、『大磯町景観条例』に基づく特別な申請が必要でした。
大磯町として歴史ある町並みや自然環境を永く守り育てていこうとする取り組みをしていることが、
その条例の内容からもわかりました。
(大磯の町並み。歩道橋を渡る際に偶然富士山を発見!)
先日、「明治記念大磯邸園」を訪れて旧陸奥宗光別邸を見学してきました。
陸奥邸は宗光が病気療養のため明治28年に建てたもので、関東大震災で一部倒壊を経て、
昭和5年に元の邸の配置を踏襲して建てられた数寄屋風の木造平屋建ての建物です。
正式には「陸奥宗光別邸跡・旧古河別邸」
宗光が住んだ建物そのものではありませんが、昭和初期の本格的な数寄屋風建物が復元されています。
三方が縁側に囲まれた明るく広々とした部屋で、南には日本庭園を見下ろす風景が広がっています。
居心地の良い縁側から松林を眺めていると、時を忘れてしばらく佇んでしまいました。
北側に位置しながら、外光をふんだんに取り入れた明るい台所。
白漆喰で仕上げた壁は清潔感があり、流し台や調理台が機能的に配置されていてとても使いやすそうでした。
化粧室と湯殿には外から直接出入りできるようになっており、海浜別荘建築ならではの構造となっています。
透かしガラスの入った丸窓や付書院風の袋棚、網代天井など凝った意匠が随所にみられ、実用を超えた魅力的な空間でした。
「明治記念大磯邸園」では、現在、陸奥邸の他に大隈重信邸が公開されており、
さらに伊藤博文や西園寺公望にゆかりのある建築を整備中とのこと。
工事が完了したら、再び訪れてみたいと思います。
tahara