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2025.08.20
中村家住宅
夏休みも終わり事務所も通常運転に戻っています。
まだまだ暑い日が続いていますが、さずがに身体にこたえます。
一体いつまで続くのでしょうか…
夏休みはほとんど仕事でしたが来客や営業の電話もなく、
ゆっくりとした時間の中で、仕事ができたのでとても捗りました。
仕事尽の夏休みでしたが、
実は夏休みではなく少し前に所用で沖縄に行ってきました。
その時に行った中村家住宅がとてもよかったです。
中村家住宅は戦前の沖縄の住居建築の特色を全て備えている建物です。
戦争の影響もあって、このような住まいがそっくり残っている例は極めて珍しいようです。
昔ながらの沖縄の住まいを知る重要な住宅なのです。
士族屋敷の形式に農民の形式である高倉、納屋、畜舎等が付随して、
沖縄の住居建築の特色をすべて備わっていることも貴重のようです。
屋敷は、南向きの緩い傾斜地を切りひらいて建てられており、
東、南、西を琉球石灰岩の石垣で囲い、
その内側に防風林を植え、台風に備えています。
目隠し塀のヒンプンもかっこいいですね。
ヒンプン越しに屋根が見える風景も慎ましやかな雰囲気があってとても良かったです。
全体的に琉球らしいおおらかさも相まって、ゆったりとした時間が流れていました。
深い軒は強い日差しから住まいを守り、中間領域をつくりながら、
強い日差しから守られているの室内の安心感が強調されているように感じます。
低い軒は首を垂れているようで品があります。
庭に入った時のスケール感が絶妙でしたが、この軒の低さに秘密がありそうです。
どのスケールも身体と近いことで建物と人との距離をより親密なものにしています。
柱の根元が木の根っこ部分がそのまま残っているのも愛らしく、キャラクターをよく表しています。
根っこの部分の方が水に強いからとのことですが、
普通なら直角に切り落としてしまうところですが、なんともいえない良さがあります。
この柱は、琉球王府時代に首里(古都)の士族の家屋を移したと伝えられていて、
材質はすべて、当時の農民には使用を許されていなかったチャーギ(イヌマキ)、
イーク(モッコク)が使われているそうです。
中村家住宅を訪れると、自然と対峙するのではなく、取り入れ共生する琉球的な自然観が垣間見えます。
沖縄という地域性はあれど、今の住まいがどれだけ重装備になっているかがよくわかります。
住まいってこれでいいんだ!と思えるおおらかさもとても魅力に感じました。
時流や流行りに踊らされることなく、改めて住まいの本質を考える機会になったように思います。
iso